ホームページへ  >  宗祖親鸞聖人  >  親鸞聖人のご生涯  >  13.十余ヶ国のさかいを越えて お問い合わせお問い合わせ  | サイトマップ  
14.遷化 »
 

13.十余ヶ国のさかいを越えて

 さて、親鸞聖人が京へお戻りになられた後も、関東のご門徒は聖人を慕い、正しい念仏の教えを請うために文を交わしたり、遠路遙々京まで赴くことがありました。
 当時の旅は命懸けでした。それにも関わらず親鸞聖人を訪ねたのは、聖人が関東を去った後、教えが乱れ始め、念仏者の間に混乱が生じたという事情がありました。

同行 「お聖人さま…、お久しゅうございます…」
親鸞 「本当によう参られた。みなは変わりないか」
同行 「はぁ…、さればでございます」
同行 「近頃は、悪人の意味を己が都合の良いように解釈し、開き直って不埒な振る舞いをする者が横行する有り様。幕府は風紀を乱す罪ありと、念仏の禁止の布令を出しましてございます」
親鸞 「ふぅ…、今も昔も変わらぬか。嘆かわしいことだ」
同行 「はい。私たちは、もうどうしてよいやら」
親鸞 「どうすればとな。決まっておるではないか。あなた方がここへ来たられのは、往生極楽の道を問い聞かんがためであろう」
同行 「たっ、確かに仰せの通りでございます。されど近頃は、念仏ひとつでは助からぬという者があります。あまつさえ、念仏は地獄に堕ちる原因(たね)であると申す者まで現れる次第。本当に、本当に念仏で間違いないのでしょうか」

親鸞 「…なるほど。されど、念仏の他に何か良い方法があればというお尋ねであれば、他を当たるがよかろう。私はただ師匠である法然上人より授かった万人平等の救いたる念仏の教えに生きているのみ。それはな。心底、私にはそれしか他にふさわしい道があるとは思えないからなのだ」
同行 「それは私どもも同じでございます」
親鸞 「ならば迷うことはないはず。私は私にふさわしい教えに生きる。よって、決して後悔はない。まぁ、あなたたちはあなたたちのお心に従えばよろしかろう。されど、あえて申すとすれば、おのおの今一度、阿弥陀如来の本願を思い起こし、己をよくよく問うてみなされ」
同行 「はーっ」

 このような事態を憂いた親鸞聖人は息子、善鸞(ぜんらん)を関東に使わし、教えの混乱を沈めようとなされました。しかし善鸞は関東をまとめようとするあまり、親鸞聖人の教えに無いことを語り、かえって混乱を大きくしてしまったのです。

親鸞 「もはや、やむを得まい」

 親鸞聖人は善鸞を泣く泣く義絶。親子の縁を切り、念仏を守る苦渋の決断をなされたのでした。

プリンタ用画面 友達に伝える
14.遷化 »